【講師連載コラム】期待を”裏切る”講演会

講師コラム「研修の現場から」
西原 猛(日本プレゼンテーション教育協会 代表理事)


良い意味で”期待を裏切る”なら大歓迎なのですが……

これはまだ、日本プレゼンテーション教育協会を設立する前のお話です。

十数年前、とある起業家向け講演会に参加しました。「起業家にはプレゼン力が必要だ」という、非常に興味深いタイトルだったので、あいにくの雨模様でしたが、内容にかなり期待をして会場に向かいました。

ところが……。

1時間の講演のうち、約15分が自己紹介と経営している会社の宣伝。
うわー、話が長い。この時点で嫌な予感しかしません。さっさと起業家に必要なプレゼン力について話してくれないかな……と思っていたのですが、

「自分がトップ営業マンになった時は、プレゼンの連続だった」
「徹夜で資料作成を頑張った」
「最終的には根性だ」

--などの話(自慢話ともいう)が、その後も延々と続きました。

いかん!期待外れだ、と思って客席を見渡すと、案の定、うつむいている人が半数以上。流石に壇上の講師も、会場の様子に気がついて焦りはじめたのか、ますます早口に、ますます自分のことばかりしゃべり倒します。

そしていよいよ終了時間が近づき、最終的に話がどうなったかというと……

「……というわけで、プレゼンが上手くなるにはひたすら練習あるのみです」

おいおいっ! 起業家に必要なプレゼン力の話はそれだけかっ!?

全力でツッコんでしまいました(もちろん心の中で)


さて、これから起業を考えている人や、既に起業している人などは、どんな思いで講演を聞いていたでしょうか。

タイトルやテーマから聞き手は「こんな話が聞けるのかも」と期待しています。
それを外してしまうと聞き手はがっかりしてしまいます。せっかく集まって頂いた聞き手の貴重なお金や時間を無駄にしてはなりません。

これが反面教師として、私が講演会や社内研修を依頼された時のとても良い教訓になっています。講師としてある程度キャリアを積んでくると、自分が「話し慣れた」「教え慣れた」内容になりがちです。

しかし、しっかりと研修担当の方と打ち合わせし、社内のプレゼンやコミュニケーションに関する課題を明確にしてから、研修プログラムを作らなければ、前述のように、期待を裏切る講演会や研修になってしまいます。

そうなると、会社や受講者にとっては貴重な時間とお金の無駄になりますし、研修担当者は社長に怒られるし、講師には二度と依頼が来なくなります。


講師の一言

相手の期待に応えよう

西原 猛/JPEA代表理事 兼 チーフ・インストラクター

イベントの企画・制作や、上場企業の新製品発表会や決算説明会、株主総会等のPR・IR支援に携わる。この時、プレゼンテーションの成否が「仕事や人生の結果」を左右する事を痛感し協会を設立。企業や学校、教育機関などで活躍している。京都府出身。