プレゼンの練習というと、作成したスライドや資料を見ながら、頭の中でこう話そう、と考えるだけの人が多いのですが、実はこれが失敗の元なのです。では、結果を出す人が行なっている正しいプレゼンの練習方法とは?
講師コラム「研修の現場から」
西原 猛(代表理事)
時々、受講者からこんな質問を受けます。
「こうすれば絶対プレゼンが上手くいく、という法則は有りませんか?」と。
私もそれを探し求めて十数年、残念ながら未だに見つかっておりません。
……というのも、プレゼンの成功には様々な要因が絡んでくるからです。
例えば、相手の望む価格と一致していた、最初から購入前提で聞く儀式的なプレゼンだった、競合がいない状態だった、コンペで競合相手が失敗した、根回しが上手くいった、などです。
私自身も、とある会社にプレゼン研修のプレゼン(ややこしい)をしたもののあまり手応えが無く、駄目だろうな…とあきらめていたところに「御社に決まりました」。このように「なぜ???」と思うことが時々あります。(ちなみに決定理由は、研修担当の方が当協会の無料体験会を受講し、講師や研修の雰囲気を気に入ったから、だそうです)
ところが「失敗の法則」はいくつか存在します。
そこで今回のコラムから連載で「これだけは絶対にしてはいけない!」という法則をご紹介します。
声を出して練習しないと失敗する
第1回目の法則は「声を出して練習しないと失敗する」です。
いやいや、社会人の忙しさは重々承知です。正直言ってプレゼンの練習なんかに時間を取る暇があったら、もっと資料を作りこみたい、売上に直結する業務に取り組みたい、新しい企画を考えたい、あるいはとっとと寝たい……わけです。
だいたいこう考える原因は、プレゼンの準備はスライドや企画書を作成したら終わり、と考えているからです。
これが大きな間違い!
プレゼンの本番では、スライドや配布資料を使いながら「話す」ことをしなければなりません。ところが、スライドを眺めながら頭の中でどう話そうかと考えたことが、実際に声を出して話せるかというと、そうは上手くいかないものです。
本番でスライドを見てもすぐに言葉が出て来ず、「えーー」とか「あのーー」などと言い淀んでしまいます。当然、良い結果が出るわけがありませんね。
台本は100回読め。台詞は口で覚えろ。
ところで、プレゼンと同じく「話すことを覚えること」が必要な仕事の1つに「俳優」があります。俳優は台詞を覚えるとき、まずはひたすら台本を音読します。この時点では感情とか演技とか一切考えません。ただひたすら声を出して台詞を読みまくります。関東地方の夜中の公園で本を持って何かブツブツ言いながら歩いている人を見たら、大抵は俳優関係です。これをある演出家は「台本は100回読め。台詞は口で覚えろ。」と言っていました。
確かにその通りで、頭に入ってくると次の台詞を頭で思い出さなくても、勝手に口が動くから不思議なものです。このようにまず台詞を覚えてから、次の段階として感情とか演技について考えます。
全く同じことがプレゼンにも当てはまります。スライドや配布資料を台本とするなら、次は書かれた台詞を覚えなければなりません。どうやって覚えるか?
声を出して練習するのです。それから緩急や言葉の強調、間の取り方、視線の動かし方と言ったテクニックをどう使うか考えるのです。
いやいや、覚える時間がないから、話すことを書いた原稿を作って読めばいいじゃないか、って?
……では、ちょっと想像してみましょう。プレゼンターが1時間、ただひたすら原稿を読み上げるだけのプレゼンに、聞く側としてその場にいる自分を。
眠い、辛い、退屈の三重苦ですね。
原稿は文語、プレゼンは口語
そもそも原稿は「文語(書き言葉)」です。しかしプレゼンで使うのは「口語(話し言葉)」です。文語は目で読む分にはわかりやすくても、耳で聞く分にはわかりにくくなります。また、原稿を「口語」で書いたとしても、やはり読み上げるだけではスッと耳に入ってきません。アナウンサーやMCのように「話すように読む」には相当な練習が必要になります。
人間、頭の中で考えていることを声に変換するのは、思った以上に上手くいかないものです。イメージトレーニングも大切ですが、まずはしっかりと声を出して練習しましょう。
講師からのアドバイス
声を出して練習するのが、プレゼンの練習
西原 猛
JPEA代表理事 兼 チーフ・インストラクター
イベントの企画・制作や、上場企業の新製品発表会や決算説明会、株主総会等のPR・IR支援に携わる。この時、プレゼンテーションの成否が「仕事や人生の結果」を左右する事を痛感し協会を設立。企業や学校、教育機関などで活躍している。京都府出身。
自己流を見直せば、更に上手くなる!