プレゼンを始めてふと気がつくと、相手がイライラしていたり、明らかに興味を失っていたり……こんな経験をお持ちの方が多いと思います。
いったいなぜ、そうなってしまうのでしょうか?
講師コラム「研修の現場から」
西原 猛(日本プレゼンテーション教育協会 代表理事)
時々、受講者からこんな質問を受けます。
「こうすれば絶対にプレゼンが上手くいく、という法則は有りませんか?」と。
私もそれを探し求めて十数年、残念ながら未だに見つかっておりません。
ーーところが「失敗の法則」はいくつか存在します。
練習方法を間違っている、目的を間違っている、話し方を間違っている……などなど。そこで今回のコラムから連載で「これだけは絶対にしてはいけない!」という法則をご紹介します。
■なぜイライラするプレゼンになってしまうのか?
プレゼンテーションが失敗する要因の一つに、「聞き手の疑問に応えていない」ことが挙げられます。すなわち「詳しく聞きたいのに、話が次にいってしまった」という、非常にストレスがたまるプレゼンのことです。
例えば……
「このタブレット在庫管理システムをお使いいただければ業務効率が改善します。では、どのように使うか操作方法のデモを見ていただきたいと思います。まず、ログイン画面が出てきますのでログインIDを入力していただき……」
……という話をした場合、聞き手は話を聞いてどんな疑問を持つでしょうか?
聞き手の立場で考えてみれば、
- なぜ業務効率が改善出来るのか?
- 具体的にどのくらい業務効率が改善するのか?
- 本当にタブレットが必要か? 違う方法はないのか?
- 他社とどう違うのか?
- ログイン方法なんか、いまどき誰でも分かるわ!
……などが考えられますね。
最後は疑問というよりツッコミですが。
■聞き手の立場で考えよう
すなわち「話したい事」と「聞きたい事」にギャップが生じている状態を「聞き手の疑問に応えていない」と言います。こうなる原因はプレゼンターが「事細かに説明すれば、こちらの言いたいことを理解してくれるだろう」と、自分が言いたいこと、伝えたいことばかり話しているからです。
すると、聞き手の「メリット」や「なぜ必要か?」「その根拠は?」といった疑問に対する答えが完全に抜け落ちてしまいます。聞き手は一方的な説明ではなく、「得られる利益」「使用するメリット」「必要な情報」などを聞きたいのです。
そこで、プレゼンの内容を構成するときの出発点は、「常に聞き手の立場で考える」ことです。あなたが何を話したいかではなく「聞き手が何を聞きたいか」が重要です。
ですから、ひと通りプレゼンの内容を構成し終わったら、客観的に眺めたり、上司や同僚に見てもらって、疑問に思う事を言ってもらいましょう。
「この項目で、聞き手はこんな疑問を持つかもしれない。もう少し補足した方がいいのでは」とか、「その内容はほとんどの人が知ってるから、配布資料に補足として載せるだけでいいのでは」……など、一人で悶々と考えているより、遥かに洗練されたプレゼンに仕上がります。
なお、意見をもらう事に対して「一生懸命考えたプレゼンに、あれやこれやと意見を言われるのは嫌だなあ」と躊躇してしまいがちですが、すべてはプレゼンを成功させるためです。客観的な意見をもらって、プレゼンに磨きをかけましょう。
講師からのアドバイス
聞き手の立場で内容を考えよう
西原 猛
JPEA代表理事 兼 チーフ・インストラクター
イベントの企画・制作や、上場企業の新製品発表会や決算説明会、株主総会等のPR・IR支援に携わる。この時、プレゼンテーションの成否が「仕事や人生の結果」を左右する事を痛感し協会を設立。企業や学校、教育機関などで活躍している。京都府出身。