『……とも言い切れない』という視点を持つ
「『普通、だいたい、こうでしょ』と自分が思っても、相手はそう思わないことがあります。そこで、どこかの漫才師のように、自分の考えについて『……とも言い切れない』という視点を持つように心がけてください」と越石先生はアドバイスする。
そもそも自分の「普通」と相手の「普通」が同じなら何も問題ない。そう、価値観が違うからコミュニケーションがうまくいかないのだ。例えば部下に「この書類、早めに頼むわ」と指示し(この程度の仕事なら普通、午前中にはできるだろう)と「早め」=「午前中」と思っていたら、部下は(別件もあるし、今日中で大丈夫だろう……)と、「早め」=「今日中」と思っていた。そして午後になっても書類が上がってこないので、上司はイラっとして部下に「書類、どうなっているんだ!」と怒るわけだ。
越石先生のアドバイスにあるように(普通、午前中にはできるだろう……)と考えた自分に対し、(……とも言い切れない。まずどのくらいで出来そうか、確認しよう)という視点を持つように心がけたい。
そして部下の話を聞くときも同様で、相手の話の途中で、だいたい何を言いたいのか理解できるので、遮って答えて相手に嫌な顔をされるBさんに対し、
「相手の話を聞きながら『分かった。その先は言わなくてもいいよ』と思ってしまい、相手の話を遮ってしまうのですね。そういう時は、自分が理解したことについて『……とも言い切れない』と自問自答しながら、話を最後まで聞くようにしましょう」と越石先生はアドバイスする。
相手の話を十分に理解するためにも「最後まで聞く」ことが大切だが、それ以外にもコミュニケーションにとって大切なことがあるという。
そもそも、相手の言葉を遮ると相手は苛立つ
「相手の言葉を遮ると、相手は苛立ってしまいます。そうなってしまうと、先ず、相手の苛立ちを取り除かないと、良好なコミュニケーションが築けなくなってしまいますよね? 無駄に時間を過ごしたくないと先走った結果、かえって非効率的になってしまわないよう注意しましょう」
自分の話を途中で遮られて喜ぶ人はいない。人は基本的に他人の話を聞くよりも、自分の話を聞いてもらいたい、という欲求があるからだ。ところがBさんのように社会人経験が豊富であったり、頭の回転が速い人は、部下が最後まで言わなくても何を言いたいのか分かってしまう。そしてせっかち(関西では「いらち」)な性格な人だと、最後まで聞く忍耐がない。ついには部下が話しているのに話を遮り、自分が話し始めてしまうのだ。
果たして、これで部下は「分かってもらえた」と思うだろうか……
さらにBさんには問題がある。「早合点」「早とちり」が多いということだ。……ということは、自分では部下の話の途中で何を言いたいのか分かったつもりでも、本当は分かっていなかった、合っていなかった、ということだ。もちろん、結論を先に言わない・話が長いなど、部下の話し方にも問題がある場合もあるが、本当は何を言いたいのかを判断するためには、やはり最後まで聴くことが重要だ。上司には「忍耐」も必要である。