プレゼンで結果を出すためには、相手のタイプに合わせてどのように進めていくかという「作戦」を変えることが重要です。
例えば、対戦スポーツでは相手チームのタイプによって作戦を変えます。「今度の相手は攻撃型だから、攻め込まれる前に前線で積極的にプレッシャーかけて、相手のミスを誘ってカウンター狙いだ」みたいな感じです。
相手のタイプなんぞ知らん!どんな相手でも自分のスタイルを貫くだけだ!……というのもアリかもしれませんが、それでは辛いものが苦手な人を、自分が大好きだからと言う理由で激辛料理店に連れて行くようなものです。たとえその料理店が五つ星の超有名店店だったとしても、連れて行かれた人はあまり嬉しくありません。むしろ迷惑です。そして下手をすれば「こんな店に連れてきやがって!」とあなたのことが嫌いになるかもしれません。
プレゼンも嫌われたら終わりですからねぇ……。
やはり結果を出しているプレゼンの多くは、相手によって伝え方を変えています。
そこで相手のタイプによって作戦を変えよう、と言うお話です。
■あなたのプレゼン相手はどのタイプ?
さて、顧客や上司など、ビジネスシーンでプレゼンを聞く相手のタイプは、大きく4つに分けられます。
1.とにかく成果だ!「成果重視タイプ」
2.石橋を叩きまくる「慎重派タイプ」
>> 3.……で、根拠は?「論理的タイプ」※今回の解説はこちら
4.なかなか決断できない「優柔不断タイプ」
「成果重視タイプ」は、その名の通り成果が全てです。「売れる」「利益が出る」「効率が上がる」と言うように、わかりやすい成果を求めます。
「慎重派タイプ」は、「こうあるべきだ」という想いが強く、物事を完璧に進めたいがあまり、少しでも納得できないこと、引っかかることがあると、なかなか話が前に進みません。
「論理的タイプ」は、曖昧な話が嫌いです。正確なデータや根拠がないと信用してくれません。
「優柔不断タイプ」は、色々考えすぎたり、周囲の反応を気にしすぎるがあまり、自分で決断できないタイプです。
前回は相手が石橋を叩きまくる「慎重派タイプ」の場合について解説しました。
今回は「論理的タイプ」にプレゼンする場合の作戦について考えます。
■「論理的タイプ」はこのように攻略せよ
論理的タイプは個人の主観や勘、経験よりも、データや資料など客観的な「事実」を重視します。
また、物事を分析的、論理的に考える傾向があります。
そこで、このタイプに対する作戦ポイントは次の3つです。
・感情よりも論理優先
・論理的に話を組み立てる
・メリットだけではなくデメリットも伝えて、総合的に判断させる
■感情よりも論理優先
「とにかくビジネスで勝つには他人より多く働くことだ!」とかいう根性論を振りかざしても、論理的タイプには全く響きません。「多く働けば勝つ、というデータはあるんですか?」と冷静に切り返されます。
そこで彼らを動かすには、正確な情報や明確な理由を準備することです。
「社員一人当たりの生産性をあげたいなら、まず会議時間を半減すべきだ。なぜなら、1回の会議時間は平均79.3分。さらに資料準備には平均139分かかっており、残業の元凶にもなっている。厚労省のデータによると、会議時間と生産性は反比例している。よって、会議時間を半減すべきだ」
このように根拠となるデータを示すことが重要です。
また「『とりあえず』進めてみて、問題あれば修正しましょう」という、見切り発車的プレゼンもうまくいかないことが多いです。
特にプレゼン相手が、精神科医デビッド・D・バーンズが唱えた「認知の歪み」の一つ、「全か無か思考」の持ち主、いわゆる物事を白か黒か、正義か悪かなど、二分して考えてしまうグレーゾーンが全くない人だった場合、すべての準備が完璧でなければ動きません。
「全か無か思考」(all-or-nothing thinking)
ものごとを白か黒かで判断しようとする。中間的な判断やあいまいさを許容することができない。
特にネガティブな判断をする傾向にあり、完璧主義者になりがちである。好き-嫌い、良い-悪い、正解-間違い、成功-失敗の二極の選択肢しか持たない。1つでも悪い点があれば失敗・不合格・欠陥だと判断してしまう。デビッド・D・バーンズの「10種類の認知の歪み」より
まあ、ビジネスは実行してみなければわからないところも多々あるのですが、そのような考え方がなかなかできないタイプなので、できる限り--人員配置はこのようにする、このようなスケジュールで実施する、考えられるリスクとその対応方法はこちらのリストにある通りなど--綿密に準備しておきましょう。
万が一、あなたが「見切り発車」タイプで綿密な計画作業が苦手なら、得意な部下や同僚に作ってもらうのが一番手っ取り早いですよ。適材適所です。
■論理的に話を組み立てる
論理的タイプの相手に対して、ついでに筆者のような関西人に対しても避けるべきは「結論を最後に言う」です。
なぜなら、これから何の話をするのかが先にわからないと、イラッとするからです。
そこで覚えておきたいのが、有名な「PREP法」です。
1.Point(結論)
30代40代の大人を店に呼び戻す商品開発が急務
2.Reason(理由)
売上の半分を占めるこの世代の来店回数が急激に減っているから
3.Example(事例)
ユーザーアンケート分析結果
・主力商品について20代「甘くて美味しい」、30代「甘すぎる」
・最近、魅力的な商品がない
・競合の進出
4.Point(結論)
だから、30代40代の大人を店に呼び戻す商品開発が急務
このように話を組み立てると、論理的タイプは最後まで聞いてくれます。
■メリットだけではなくデメリットも伝えて、総合的に判断させる
論理的タイプの相手に対して、正しく判断するための情報不足や、デメリットを隠したりするのは避けましょう。
例えば……
「バッテリー持続時間が30%も伸びます!(メリット)」
……というメリットを話した場合、相手は(代わりに重くなったり、サイズが大きくなったりしないんだろうか?)という疑念を持ちます。そこで……
「質量は80g 増加しますが(デメリット)、ユーザーアンケートでは8割が『それほど気にならない』という回答でした」
……というように話します。80gという具体的な数字を示すのがコツです。少々増加します、では相手から「具体的にはどのくらい増えるのですか?」と突っつかれる可能性大です。
このように、デメリットもあるが、大した影響はないですよ、とこれまたデータを使って説得します。このタイプに限った話ではありませんが、いいことばかり言うプレゼンは逆に信用なりません。相手にデメリットを隠しているように思われないか、気をつけましょう。
-----
次回は「優柔不断タイプ」にプレゼンする場合、どのような作戦を立てたらうまくいくかについて解説します。